地域を持続させる地域の場づくりとちのきえんがわ

長野県諏訪郡富士見町の古民家を再生してみんなが集まる場をみんなで創っているんだよというお話をされている方がいて、面白そうなので取材に伺ったのが、今年2023年の春でした。

楽しそうにお話しくださったのは、富士見町に住む長崎徳行さん・ひろみさんご夫妻。愛知県出身のお二人は信州が大好きで、岐阜県で暮らしていた時に長野県茅野市にいったん移住。ご縁があって富士見町に引っ越しされ、地元の若い人たちと知り合って「地域の人たちが集まる場づくり」に参加しているそうです。

現場は、国道20号線甲州街道からほんの少し山間に入った、芓（とち）の木集落と呼ばれているエリアにある大きな古民家。まさにリノベーションの最中でした。

「ここは小笠原商店さんという老舗の寒天屋さんの、築約100年の家屋兼店舗兼製造場だったんです。」とのこと。小笠原商店さんは約20年ほど前に伊那市に移転されてそちらを本店としており、その後この建物は長らく使われておらず、近年は栃の木集落も過疎化が進んでいるそうです。

集落内には旧甲州街道が通っており、現在の国道20号線が整備される前は、この辺りは人や物資が行き交う街道筋だったのでしょう。

建物や集落の風情に惹かれた富士見町出身の若い人たちが、「ここに人が集まる場・コミュニティを創りたい」と思い立ち、少しづつリノベーションを始めたとのこと。

小笠原家の人たちも進んでリノベーションとその後の運営に協力するという流れになり、2022年には古民家再生プロジェクトとして補助金を獲得することができ、場づくりは一気に進みます。

プロジェクトリーダーは、富士見町出身30代、地域プロデューサー・stay gold japan代表・山本佑太さん。家庭を持ち子供ができて、自分が育った富士見町に子供が少ないことに気づき、何とかしなければと奮起したそうです。

左から、プロジェクトリーダーの山本祐太さん、スタッフの長崎徳行さん・ひろみさんご夫妻

「諏訪地域は、自分たちを守るために生きているようなところがあって、そうすると地域が排他的になり衰退してしまう。新しい動きがなくなり面白くないので若い人たちが出て行って戻らない。若い人たちがいなくなると、地域のお年寄りも若々しさがなくなる。これはいけないなと思った。

ここは人が集まる場にしたいのだけど、コミュニティを創りたい。集まってくる人たちが、それぞれ自分自身、自分の役割を発見して活躍できるような場づくりをしたい。

例えばこの古民家を再生しながら、周辺にある小笠原家所有の山や森も活かしていきたい。山の手入れをするワークショップをしたり、ダーチャフィールドやバイオトイレづくりをしながら、自然環境の勉強ができるといいですね。

その時に、地元で山や森の仕事をしている人が関わってくれて本職を活かせるといいなと思いながら、この場づくりを進めているところです。

地域の人たちにも集まってもらいたいですね。子どもたちの寺子屋、教育の場になるといいなとも思っています。結果的に集落にも人が増えるといいなと。」

長崎さんご夫妻は、そんな山本さんや地元仲間の皆さんの夢に共感し、一緒に場づくりができることが嬉しいのだそうです。

ひろみさんは、「地元のレンタルシェアキッチンで知り合った飲食店さんに、ぜひ出店して欲しいと思ってお声かけしているところです。いろんな方がこの場所で活躍してくださるといいな。」とのこと。

自力で店舗づくりをして開業するまでではないが美味しい料理を作り接客が大好きな皆さん、いらっしゃいますものね。シェアキッチンは最近のブームでもあり、なんだかワクワクするお話ですね。

2023年7月にオープンした「とちのきえんがわ」さんを再びお訪ねしました。

集落の道に看板が立てられていました。

建物の表玄関側の路地は細くて駐車スペースがないため、裏側が玄関になっているんですね。そちらへの誘導です。（google mapでは表側が表示され、そちらにナビされますのでご注意ください。）