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「ほんきで、ほんとの話をする」トークライブ、「NOROSEES(のろしーず)」。
配信もアーカイブもなし、パソコンやスマホメモもNG。同じ空間を共有するからこそ語られる、ほんきで、ほんとの話。
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と題されたイベント『Co-Work Talk Session vol.1』に伺ってきました。
長野県の中信・南信エリアにある3つのコワーキングスペース「INADANI SEES(伊那市)」「スナバ(塩尻市)」「富士見 森のオフィス(富士見町)」の運営リーダー3人による本音のトークライブということで、2024年12月2日(月)に開催されたvol.1の会場は、長野県伊那市にある「産学官連携拠点施設 INADANI SEES」。
通称「伊那谷」と呼ばれているこの地域は、南アルプスと中央アルプスに挟まれた、天竜川に沿って伸びている盆地で、自然豊かな山々に囲まれ、林業や農業が息づいている土地です。INADANI SEESは、自動車道「伊那」ICを降りてすぐ、信州大学伊那キャンパスの向かいにあります。
レンタルオフィス、シェアオフィス、会議室、個室、レンタルキッチン、ホール(イベントスペース)、さらに伊那谷の森林資源で作られた商品や書籍を販売しているショップが併設されています。
レンタルオフィスは月額利用ですが、他のスペースはドロップインでも利用できるようです。
コワーキングスペースの運営というよりも、この地域で起業したい人へのインキュベーション(創業支援)に力を入れている様子。運営は、地元組織への業務委託とのこと。
建物内には、信州大学による、ドローンを使った森林管理の実証実験・事業モデルがパネル展示されていました。地元林業の産業化ですね。
トークライブはアーカイブなしメモ禁止とのことで、以下は内容のごく一部。Local stay 諏訪・松本編集者の帰宅してからの覚え書きではありますのでご容赦。トークは白熱して大変面白かったです。
インキュベーション施設運営のリアル、そこに来る二拠点居住者や移住者の起業のリアル、人と人とのつながり、地域とのつながり、ネットワーク、何かが生まれ始まる、関係性を超えて成長できるということ。
起業後は事業が成り立ち持続しなければならないがそのための支援・インキュベーションとして何ができるのか、インキュベーションも行うコワーキングスペース運営の組織づくり、組織のミッション・ビジョン・バリューづくり、行政主体事業でありながら運営者に委ねられている自主的な企画と実行。などなど。
◎コワーキングスペースを利用する人たちの多くはエンジニアやクリエイターなど、クライアントからの仕事を請け負ういわゆるクライアントワークが多く、事業をゼロから立ち上げて経営する起業者は多くはない、インキュベーションを求めているのは圧倒的にゼロイチ起業の方で、それをぜひとも応援したい。
◎コロナ禍で人の行き来が制限されオンライン在宅ワークになって、コワーキングスペースの会員は爆発的に増えた。その頃から、会員同士の交流はより深まったと思う。
◎運営者として、会員の情報をスタッフで共有しているが、把握してコミットできる限界は150人とか200人レベル。京都大学のコミュニティ研究で、250人までがコミュニティが健全に成り立つ規模だとされているが、コワーキングスペースでもそんな感じだと思う。
◎起業アイデアにファンド(資金)を付ける支援で、ファンドが付くのは、アイデアを実行している事業者。こういうことをやりたい、こういう事業を立ち上げたい、と言う人は多いが、やり始められる、行動ができる人に支援が集まる。
◎起業に資金は必要なんだけど、起業者が求めているのは資金だけではない。事業に役立つ情報とか人を紹介するとか、特に外から来て地域で事業やりたい人はそうした支援を望んでいる。
◎地域社会が人口増加して成長していた時は、地域の事業も成長曲線だったし、それが求められた。人口減少が基本の時代にあって求められているのは、収益スパイラルではなく、どういった本質的な価値を提供できるのかということではないか。起業する人も、成長曲線を志向する人ばかりではない。もっとゆるやかに持続できる経営をしたい人が多い。
などなど。人口減少化が続く地方の地域で、成り立ち持続する事業のインキュベーションはもっと知りたいところ。Local stayは引き続き取材していきたいと思います。
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登壇者さんのプロフィール。
(写真左から。INADANI SEESホームページのイベント告知より引用させていただきました。)
<奥田悠史 氏(INADANI SEES)>
大学では農学部森林科学を専攻。バックパッカー世界一周を経てライターとして地域の農家さんを取材する毎日を過ごし、デザイン事務所を立ち上げる。2016年に「森をつくる暮らしをつくる」をミッションに掲げる(株)やまとわを立ち上げる。暮らしの提案が森と暮らしをつないでくことを目指して、森づくりからモノづくり、自然×クリエイティブ事業などに取り組んでいる。2023年より伊那谷の農と森のインキュベーション施設 inadani seesの企画運営も担当。
<三枝 大祐 氏(シビックイノベーション拠点 スナバ)>
2017年4月に転職とIターン移住で塩尻市へ。塩尻市役所では地方創生、官民連携、関係人口に関するプロジェクトを手掛ける。特にシビック・イノベーション拠点スナバの立ち上げから手がけ、地域における(社会)起業家や社会的企業の創出、地域外の人材流動、多様な主体との共創といったインパクトを生み出している。
<松田 裕多 氏(富士見 森のオフィス)>
京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)卒業を後、半年間渡米しカリフォルニアのアートやアウトドアカルチャーを体感し、帰国後『THE NORTH FACE』のセールススタッフからキャリアをスタート。その後デザインスタジオ「nendo」にてアシスタントとしてインターン、都内メーカーでデザイナーとしての経験を積む。2016年長野県富士見町に移住し、同町の地域おこし協力隊に着任。コワーキングスペース『富士見 森のオフィス』の初期メンバーとして、移住促進事業に従事。現在は、森のオフィスのクリエイティブディレクションの他、デザイナー/アートディレクターとして地域の中小企業、都内ベンチャー企業のブランディング業務に携わる。
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